失われた時を求めて (138)

プルーストは今後のことについて重要なことを述べている。これから執筆生活に入るのである。以下引用文。(吉川一義訳)

《もちろん私は、さっそくあすから、今度はひとつの目的を持ってではあるがふたたび孤独な生活に戻るつもりだった。仕事のあいだは、私の家に人を会いに来させたりしないだろう。自分の作品をつくる義務が、礼儀正しくする義務に、いや、親切にする義務にさえ、優先するからである。長きにわたり私に会っていなかった人たち、今しがた再会して私の病気は治ったと思っている人たち、一日の労苦が終わり生涯の労苦が中断したときにやって来て、以前サン=ルーを必要としたように私を必要とする人たち、そんな人たちはもちろん執拗に懇願するだろう。(略)それでもあえて私は、会いに来たり呼び寄せたりする人たちに、自分はきわめて重要なことがらをかかえていて、それを発見するために自分自身との緊急かつ重大な待ち合わせがある、と答えるだろう。》

といいつつプルーストは、息抜きのために選りすぐりの娘と何とか会えないかと画策するのである。以下引用文。(吉川一義訳)

《結局のところ私は、合間に休憩や社交という息抜きを必要とするときでも、社交人士たちが作家にとって有益だろうと信じる知的な会話よりも、花咲く乙女たちとの恋の戯れのほうが選りすぐりの糧となるだろう。》

なんとジルベルトに向かって、会いにくるときはとびきり若く貧しい娘と来てくれるなら嬉しいとまで言っている。