東洋文庫 アラビアンナイト 1 (15世紀末)

訳者によるまえがきより一部を紹介する。

《この一書の中にはインドやペルシア、アラブ世界などのもろもろの民族の夢と現実、悲しみや喜び、世界観や人生観、信仰や風俗などがなにくれとなく語り出されている。人間性の醜さも美しさも、まことに心おきなく写し出されている。真実を標榜しながら、虚偽・見栄・作為に満ちた史書などよりも時としてはるかに多く過去の史実を伝えていると見られる節が多いように思われる。(略)この訳書が主本として拠ったテキストはいわゆるカルカッタ第二版とよばれるもので、もと英国のターナー・マキャン少佐がエジプトで入手し、インドにもたらした写本をもとにし、マクノートンが一八三九年にカルカッタで第一巻を刊行したものである。》

訳者あとがきから一部を紹介する。

アラビアン・ナイトは大体百八十ほどのかなり大きな物語からなっているが、これらの物語の中にはさらにまた他の説話を含んでいるものも少なくない。多いのになると二十七もの支話に別れているものがある。これら多数の説話をシャハラザードという賢い妃が、千と一夜の間に、夜な夜なシャハリヤール王と、自分の妹ドゥンヤーザードに話して聞かすという構成になっているが、何故にこの女性が長物語をするようになったかということにも、またひとつの不思議な来歴があったので、この因縁話が枠となって全編をその中にかこみ込む形式になっている。》

本文を読まなかった訳ではなく読んでみたのだが、なかなか不思議で興味を引く話になっている。インドの説話のように大げさな嘘だらけという事もなく、適度なファンタジーが混じっているところが読みやすく人気が高い理由だろう。当ブログではすでにアラビアンナイト別巻のアラジンとアリババが取り上げてある。