フォークナー 八月の光 (4)

リーナがやって来た日に起こった大事件、猟奇殺人事件と放火についての概要はわかったが、犯人についてはまだ明示されてはいない。虚言癖のあるブラウンか、カミソリをいつも所持しているクリスマスなのか。 すると突然にクリスマスの生い立ちが詳述される。…

フォークナー 八月の光 (3)

バイロン・バンチは30過ぎの男で七年前から製板工場で働いている。そこにある日、バーデン屋敷の火事のあった日、リーナが訪ねてきて会話をした。リーナはすぐにこの男ではないと悟ったが、バイロンはリーナの探している男がクリスマスの相棒のブラウンだと…

東洋文庫 朝鮮独立運動の血史 1 (1920)

東学党の乱についての記述がある。 《こうして、わずかな間に、京畿、江原、黄海、慶尚の諸道に蔓延し、その勢は燎原の火のようであった。全州域を攻略した時、「ソウルに兵をすすめ、君側の奸を除こう」と声明した。 朝廷は、おどろきおそれ、清国に救援を…

フォークナー 八月の光 (2)

この町の製板工場でのエピソードが語られる。語り手はバイロン・バンチである。三年前にフラリとやってきたクリスマスという男について観相学的に語っている。 《靴は埃だらけだしズボンは汚れていた。しかしズボンは質のいいサージで筋もきちんとついており…

フォークナー 八月の光 (1)

いよいよフォークナーの小説を読む。新潮文庫版である。 P43までは4週間にわたるリーナの旅である。アラバマから架空の町ジェファーソンまで歩きと馬車で踏破する。途中親切な一家に泊めてもらい路銀まで貰っている。誰もが他人を信用していない世界で、頼り…

東洋文庫 沖縄童謡集 (1934)

本書は那覇市立高女の生徒たちが課題として夏季休暇に蒐集した郷土の童謡を先生が整理編集したものである。一部を紹介する。 《37 烏 其の二 イエー、がらさー まーかいが。 わつたーあんまー(阿母) みーめー(見舞)しいが。》 《51 蜻蛉 其の1 ざーちが…

小説 天北原野 (12)

敗戦の混乱と失意を経て孝介と貴乃がエゾカンゾウの咲き誇る原野に立っている。 《オレンジ色の花群が、道の左右に、遥か彼方の地平線まで、敷きつめたように続いていた。その果てしないエゾカンゾウの大群落を眺めながら、二人は言葉もなかった。 しばらく…

小説 天北原野 (11)

あき子の末っ子の澄男の小学校入学祝いの席での会話である。 《「ところで、この戦争はどういうことになるのかな」 達吉が背を屈めて独酌しながら言う。 「そりゃあ、勝つにきまってるさ」 伊之助も上機嫌だ。電灯に頭がてらてらと光る。 「勝つかね。ガダル…

小説 天北原野 (10)

下巻に入る。ある日孝介と貴乃と子供たちは行楽を楽しむ。完治は兵役に行っており、あき子は赤ちゃんと留守番している。 《やがて左手前方に多来加部落の家々が砂に埋まりそうに建っているのが見えてきた。家々の間に馬鈴薯の紫の花が風に揺れている。部落の…

小説 天北原野 (9)

完治にいわゆる赤紙が来た。強がる完治だが動揺もある。貴乃は千人針を作って完治に持たせる。出征の日の描写がある。 《汽車は大泊駅でとまり、乗客が少し降りると、港駅に向かって発車した 。防波堤の向こうの亜庭湾に突き出して港駅はある。海中に長い鉄…

小説 天北原野 (8)

夫婦の間のことはよくある展開になっているので省略する。こういう記述がある。 《旧市街と呼ばれるロシア人の部落が、豊原の街の北外れにある。くもった空の下を、孝介は用のない人のように、ゆっくりと旧市街に向かって歩いて行く。イワンを訪ねるためなの…

小説 天北原野 (7)

不凍港である真岡漁場の描写がある。 《この家の望楼には、若い者が海を睨んで、鰊の群来を待っている筈だ。孝介もまた、桜井五郎治の世話になった年から、何年もこの望楼に登って、見張りの若者と共に、じっと海を眺めたものだった。夕暮れの海辺に、俄かに…

小説 天北原野 (6)

男女のからむ話は俗によくあるような展開になってくる。孝介はあき子を旅行に連れて行く約束をする。それは梅雨の前の5月になるだろう。 かつてあった豊真線の描写が出てくる。孝介は車中にある。 《そんな話を聞くと、自分が罪を犯しているような心地がした…

東洋文庫 修験道史研究(1942、1972)

本書は和歌森太郎の卒業論文に数編を加えて昭和十七年に河出書房より刊行されたものの復刻である。一部を紹介する。 10P 《はじめ、漠然と、修験道及びその主体たる山臥のことを歴史的に考究しようと志したさいに、思い浮かべた山臥は、第一に述べたような山…

小説 天北原野 (5)

あき子はついにピアノ教師のイワンと情事を行うようになる。それと同じ頃、孝介はある企てを実行する。 《明るく点る灯の下をくぐって、料亭花の家の広い玄関に、黒い細身の蛇の目傘をすぼめて入ったのは、梅香だった。うすい藍地に白の渦巻きの流れる衣裳が…

小説 天北原野 (4)

樺太の吹雪がとても恐ろしいことは住んでいる者なら承知している。完治はついに雪に埋まり、あとは犬に囲まれて死ぬか、という間際に小屋を見つける。九死に一生を得たのである。貴乃にとっては皮肉な結果となった。狂喜したのは伊之助である。 向田邦子も顔…

小説 天北原野 (3)

樺太の山の描写がある。 《杉の木のように真っすぐに伸びた、エゾ松・トド松が、山の斜面にぞっくり立っている。その山の下の沢沿いに、二棟の飯場が横長に建っている。ここに、杣夫をはじめ造材労務者百二十余人が寝起きしているのだ。 飯場は荒板を釘で打…

東洋文庫 耳袋 1(1814年頃)

南町奉行の旗本根岸鎮衛が書きためた雑話集で全十巻あり、東洋文庫には二冊に分けて収められている。本文の一部を紹介する。 《盲人かたり事いたす事 安永九年の事なりしが、浅草辺とや、年若の武家、僕従三人召連れ通りしに、一人の盲人向こうより来たり、…

現代文学

プルースト、カフカと来れば次はフォークナーだ。 新たな読書体験が待っている。

小説 天北原野 (2)

三浦綾子の小説の続きである。樺太の首府豊原の描写がある。 《すっかり日が暮れて、暗くなった豊原の街を、孝介とあき子を乗せた自動車が走っていた。外の寒さで、車窓は水蒸気に濡れている。中指でそっと窓を拭い、あき子は珍しげに豊原の街を眺めている。…

東洋文庫 近世畸人伝 (1790)

短い伝記のようなものや説話のようなものが混在している。一部を紹介する。 《内藤平左衛門 関東のならひ、貧民、子あまたあるものは後に産せる子を殺す。是を間曳といひならひて、敢えて惨ことをしらず。貧凍餓に及ばざるものすら、倣ひて此事をなせり。官…

小説 天北原野 (1)

三浦綾子の1976年の小説である。今140ページまで読んだところである。孝介とあき子の披露宴の場面まで来てだんだん面白くなってきた。孝介一家の赴任先ハマベツの描写がある。 《ハマナスの花の一群が風に揺れている。その向こうに、七月の太陽にきらめく海…

東洋文庫 日本の茶書 1 (1971)

林屋辰三郎氏による「茶書の歴史」の章より内容を紹介する。 茶の起源において特に重要なのは、唐の時代(760年ごろ)に書かれた陸羽による『茶経』 三巻と、遣唐使として35年間唐に滞在した僧の永忠である。 《さて唐の風俗は、すべてが王朝人のあこがれで…

東洋文庫 国文学全史 1 (1905)

著者の藤岡作太郎は緒言でこのように述べている。 《本篇は、数年前、文科大学において講じたる国文学史をもととして、これを簡明に叙し、更に一二節を加えたるものなり。夏冬の休暇毎に、逗子に、能州和倉に、豆州伊東に、材料を携えゆきて筆を執り、最後に…

伊藤計劃 虐殺器官 (2007)

ハヤカワ文庫版を少し前から読み進んでいるが、いま九割がた読み終わっている。米国政府が虐殺進行中の国にスパイを送り込み、現状を分析した結果殺すべき人物を指名する。その指名に従って暗殺を実行するのが主人公を含む部隊である。勿論ドキュメンタリー…

東洋文庫 騎馬民族史 1

これに出てくるどの民族も似たり寄ったりの生活様式、風俗を持つ。もちろん匈奴などは典型的なそれを有している。今回は渤海国に関係ありそうな靺鞨について読んでおこう。 《隋書靺鞨伝 靺鞨は高麗(高句麗)の北に在り、邑落にはみな酋長がいるが、統括す…

カフカ 「城」 (1926)

新潮文庫版をもう何ヶ月も前から読み進んでいるが、いま九割がた読み終わっている。どうも前半は退廃した村と主人公の測量技師との間で起こる修羅場となっており、消防団のエピソードが出てきてストーリーの芯のようなものが見えてくる。要するにバルナバス…

東洋文庫 菅茶山と頼山陽 (1971)

《天明八年(1788)六月五日、菅茶山は厳島を見物するために、弟子の藤井暮庵や従弟の君直などを同伴して、備後国神辺の自宅を立ち、福山、尾道、西条などをへて、十日に広島に入ると、ただちに旧友頼春水をその研屋町の邸宅に訪れた。当時芸藩に仕える儒官…

東洋文庫 朝鮮歳時記 (1911)

本文を一部紹介する。 《正月 元日 新歳問安 議政大臣は百官をひきいて宮中に参内し、国王に新歳の問安(あいさつ)をなし、箋文(国王にささげる賀表)と表裏(手織りの絹布や綿布)を献上し、正殿の庭で朝賀礼をおこなう。 八道の観察使、兵使および水使、…

東洋文庫 洋楽事始 (1884)

本書は音楽取調掛の報告書『音楽取調成績申報書』の現代語訳であり、後半には小学唱歌集の楽譜が91曲収載されている。明治五年の学制開始に続いて明治十二年に着手されたこの取り組みは世界に類を見ないものである。 本文を読むと、このような構想が描かれて…