映画 永遠と一日 (1998)


  冒頭3人の少年が砂浜から沖に向かって泳ぎだす。その中の一人がアレキサンドロスだ。死期を悟った老詩人(アレキサンドロス)は3年間雇っていた家政婦を解雇し後はどうしようかと考える。港の見えるマンションに住み今日も犬と散歩に出かける。自分の状況を詩にしている。冬の終わりには死が訪れるのだろう。アレキサンドロスがフォルクスワーゲンのワゴン車で出かけると難民少年たちが窓を拭いて生活費を稼ごうとする。警察が現れ少年たちを追う。アレキサンドロスは逃げ遅れた少年を車に乗せてやった。旅に出るアレキサンドロスは愛犬を娘のところに預けに行く。妻のアンナは3年前にアレキサンドロスの元を去っている。妻が娘を生んだ頃の親戚とのパーティの場面を妻の手紙の文面とともに思い出す。娘は冷酷そうな夫と暮らしており実家の海辺の家を売ったという。犬も預かってはくれない。アレキサンドロスは悲しみ、犬を連れて車で出て行くと街で少年が拉致されるのを目撃し後を追う。廃墟のような建物の裏で人身売買の取引が行われようとしていた。アレキサンドロスはそれに紛れ込み現場に立ち会う。買うのかと思ったらどさくさに紛れて少年を連れ出した。でも身が危なくなり金は払ったようだ。アレキサンドロスはこの難民の少年(例によってギリシャアルバニア人)をアルバニア国境まで連れて行く気だ。国境近くまで行くバスに乗せようとすると少年は逃げようとする。言って聞かせるがやはりバスには乗らなかった。タクシーを頼もうとするが道が悪いと断られる。とうとう少年を自分の車に乗せ走り出す。国境まで来ると少年は村が襲撃された話をする。仲間のセリムと地雷原を越えて逃げた話もする。国境の向こうは雪原で高く張り巡らされた鉄網塀には人がへばりついている。そこから二人は引き返して旅を共にすることにした。正義より人情を選ぶと自然に笑顔も出てくる。言葉を金で買った詩人の話をアレキサンドロスは始める。ギリシャの島で詩人が貴族のような装いで歩き回る光景は何とも奇妙だが革命讃歌を途中まで書いたらしい。花嫁行列が出てくる。アコーディオンの伴奏で花婿が踊り出し花嫁もそれに応えて踊る。鳥に似ていないだろうか。家政婦の家族の結婚式だった。アレキサンドロスは犬を引き取ってもらいに来たのだ。相手は迷惑だっただろう。疲れたアレキサンドロスはベンチにうずくまるように座ると少年の顔をしげしげと見つめる。船に乗るアレキサンドロス。昔の思い出の中に今の姿で入っている。アンナが出てくる。岩場をさまようアレキサンドロス。子供の頃自分が彫った署名を見つけて笑う。先ほどの港の風景に戻ると少年がいない。違う少年が溺死して運ばれていった。セリムだった。死体安置所に忍び込んだ少年はセリムの顔を見て置いてある荷物を持ち出した。逃げてきた仲間たちと遺品を燃やして弔う。アレキサンドロスは痛みが限界なのか明日入院するつもりだ。娘には旅に出ると言っていたのに。想像の中で入院中の母の元を訪れ別れの挨拶をする。母が窓から外に向かってアレキサンドロスを呼ぶ。ここで最初の少年たちのシーンとつながる。アンナと母のいる風景。みんなで海水浴を楽しんでいる。アレキサンドロスだけ今の姿なのだが若いアンナと抱擁している。病床の母に向かって嘆きの詩をつぶやく。夜道を歩くアレキサンドロス。少年が別れを告げにくる。仲間と行動を共にするのだ。アレキサンドロスは年甲斐もなく今夜は一緒にいてくれと懇願する。夜のバスに二人して乗り夜景を眺める。バスに運動家、学生のカップルが乗ってくる。学生は降り楽器を持った三人組が乗ってきてフルートソナタを奏で始める。最後に例の詩人が乗ってきた。歴史上有名な詩人らしい。自作の詩を朗唱し去って行く。バスは一周して戻ってきた。アレキサンドロスは車で少年を港に送り届ける。最後に想像の中で海辺の家のアンナに明日の計画を話し、問いかける。明日の長さは?と。