映画 化石 (1975)

  映像付きの小説という感じがする。テレビドラマをつなげて200分に編集した映画のようだ。原作は井上靖の小説で通俗的だが映像がなかなか興味深い。ヨーロッパ、信州を旅行している感じがする。主人公は建設会社社長で病魔に冒されており後一年生きられるだろうかと自問している。昔の仕事仲間を見舞い問いかける。晩年の生き方を模索しているようだ。孫娘との穏やかな日々かマルセラン夫人との逢瀬かはたまた参禅かどの道を行くのかを自問自答する。そうこうしている内に会社が危機になる。残りの命の時間を会社の立て直しに使って終わりにするのかという時会社の幹部に明日入院させられることになる。社長は翌日失踪し高遠の桜の場所に向かう。だが今は桜の木も雪に覆われている。春まで生きてマルセラン夫人と桜を見る事を想いながら歩く内に倒れてしまう。部下がすぐ発見し病院に運ばれる。がんの権威とされる医師の診察で手術する運びになる。医師から手術は成功したと告げられるが本当だとしたらあと5年以上生きるかもしれない。そう考えると自分の周りの世界から輝きが失われたように思えてかえってつらくなるのだった。

    一鬼(いつき)という社長は成功し家族にも恵まれ晩年を迎えるわけで後は自分の考え次第だ。最後まで世間の汚辱にまみれて生きるのか真水のような自分の時間を大切にするのか答えは明らかだと思う。ゴッドファーザーのヴィトーは三男に後を継がせてからは引退し孫娘と庭で遊ぶうちにぽっくり逝ったわけでまあこういうのが一番いい。