言葉の弾幕

   トルコ映画の卵、ミルク、蜂蜜はセミフ・カプランオール監督の文芸作品とも言える三部作だ。言葉が少なく余白が多い。日本映画と比べると伊丹十三監督の作品は余白が少ないと感じるし、山田洋次監督の男はつらいよシリーズは文芸作品的でありながら言葉の密度が高い。登場人物がまるで言葉の弾幕で自分の正体を隠すかのようだ。ユスフも母親のゼーラも全くその正体を隠そうともしていない。素のままなのである。

    ミルクの主題は母親の中にいたヘビを息子が呪術師に頼んで燻り出してもらうというもので、その時にミルクを使う。ミルクは母性の象徴ということだ。ハイネの詩ーIch grolle nichtーに「君の心の中にある闇を、心の中に巣食うヘビを見た」とあるのを思い出した。