映画 落下する夕方 (1998)

  小説の印象が薄れないうちに映画の方も観た。撮ってしまったものは仕方がないが微妙に配役の印象が原作と異なるような気がする。健吾は誠実そうな感じは出ているがもう少し野生的な大男を想像していた。リカは文学少女的な鋭い感性の女。つまり江國香織を想像していた。華子はキュートで小柄で猫のように気まぐれな女性、女優ではちょっと思い浮かばない。設計事務所の男は都会的で洗練された男。別荘の男は金持ちだが影のある中年男性。これらのキャストを完成させてリカの離人症的な描写が出来ればこの映画は原作の忠実な再現になると思う。だがだいぶ違っていた。

   誰も幸せにならないストーリーだがリカが友人と遊ぶ場面、華子と湘南で遊ぶ場面は屈託がなく楽しそうだった。これに男が加わると途端にどんよりと暗くなってしまう。男は思っているほど幸せをもたらさないし、心を繋ぎ止めることも難しい生き物であると作者ら女性陣は結論付けているようだ。