三輪家と津田家の関わりについて作者は語る。13歳の津田安壽子が三輪家の次男与志に一目惚れした事から母親の津田夫人が動き始める。ある日の真夜中、三輪家に乗り込んで行った津田夫人は父親の三輪廣志と問答をする。それがなかなか珍妙で津田夫人の過激だが常識的な問いに対し廣志はスパスパと切り捨ててゆく。政治家でスキャンダルの多い廣志だが津田夫人の夫である津田康造の親友もである。そこで津田夫人は夫から聞いた廣志の実行していた一日一悪について問いただすが煙に巻くような答えが返ってくる。
今度は兄の高志が帰ってくる。夫人が問いただすと弟は蛸を噛んだんですと云う。だからご飯を食べなくなり、自分の手は自分ではないと思うようになったのですと云う。夫人はこのシュールな問答について行けず黙りこくって居る。
今回の事件の当事者である与志は夜の街や墓地を歩くうちに暗黒と静寂を愛する様になっていた。するといつの間にか死霊の囁きとざわめきに囲まれ歩くうちに自分が無限小になってゆく感覚が生じる様になってきた。俺は、俺であると言い切った時の不快感について考え続けている。その日も夜の彷徨を終え家に帰る。すると彼を見た津田夫人は心労ゆえにぱったりと倒れる。