映画 ファベーラの丘 (2006)

  ブラジルの貧民窟のことをファベーラと言う。これはリオデジャネイロの最も危険なファベーラであるヴィガリオ・ジャラウ地区に住む住人のひとりアンデルソン・サーを追ったドキュメンタリー映画である。

  アンデルソンは元は麻薬密売人だったが改心して今ではブラックレゲエの運動の中心人物として活動している。ブラックレゲエは一度聴いてみるとその圧倒的なリズムと踊り、政治性のあるラップに魅了される。この運動グループは雑誌を発行したり無料コンサートやワークショップを行っている。この地区の子どもたちは収入のいいギャングを目指すのでこの活動によって一人でも多くの子供を悪の道から遠ざけようというのがアンデルソンの目的である。これによって五人に一人くらいはこちらの方へ来るという。

  なかなか上手くいかないようだがブラジルでは警察の腐敗がひどく麻薬密売の収益は警察がほとんど取る上に武器の横流しもする。この活動も米国の団体の援助を受けながら細々と続いているという状況である。そんな状況の中サーフィン中にアンデルソンが背骨を折る重傷を負った。だが手術前にマリア様がやって来てある言葉を述べたという。これによりアンデルソンは奇跡的に回復し今はリハビリに精を出している。

  だがこの民間の努力も強大な悪の力には勝てないような気がする。この時からすでに10年が経っているが今もリオデジャネイロは殺人事件だらけと言う。