映画 ブレスト要塞大攻防戦 (2010)

  ポーランド国境に接するように築かれたソ連軍のブレスト要塞がドイツ軍の攻撃によって陥落する話である。悪辣で非人道的なドイツ軍対同士愛に満ちた革命戦士であるソ連軍という構図で描かれている。100%プロパガンダ映画であることに間違いない。 


  ここブレスト要塞では兵士たちはまるで平時のような暮らしを楽しんでいた。踊ったり酒を飲んだり恋愛したりとこの後に起こる悲劇と対照を成すような演出である。悲劇は1941年6月22日に起こる。爆撃機が襲来し爆撃を開始する。住民も軍人も驚き逃げ惑う。

主人公は音楽好きの少年兵で事態を観察しつつ何故か落ち着いた行動をとる。ドイツの地上軍が到達し虐殺を始める。要塞内部は大混乱に陥るが勇敢なピョートル少佐が指揮をとり敵を迎え撃つ体勢を整える。敵は戦車を繰り出してくるが少佐らは突撃してゆく。ドイツ軍は一旦退いて降伏勧告をしてくる。

  その後もドイツ軍は残虐非道の行為をしそれに耐えるロシア人の姿が描かれる。ミンスクは陥落するとドイツ兵の捕虜は言う。そこへ一機の戦闘機が現れパイロットが落下傘で降りてくる。彼によると空軍基地はやられたと言う。 食糧も水も無く援軍も来ない状況で少佐が演説をする。我が赤軍には降伏の選択肢はないと言う。混成部隊で夜襲をかけることになった。

  要塞側はこの突撃でほとんどの兵を失うが軍医他少数の兵士がまだ残っている。翌朝死屍累々の中を少年兵がさまよい川のほとりで水を一口飲む。兵舎の地下には負傷兵と女子供が呆然と死を待っている状況である。少年兵は行方不明になっているアーニャを探している。だが瓦礫の中にとうとうアーニャを見つける。中尉らは結局女と子供を降伏させ要塞から出す事にする。残った兵士たちは爆撃を受け大半が死亡する。

とうとうドイツ軍が要塞を制圧する。フォーミン将校は銃殺され後にレーニン勲章を受ける。ピョートル少佐は捕虜となり生き延びたが共産党から追放される。最後に中尉が少年兵に連隊旗を託して玉砕する。 ベラルーシの荒野を行く少年兵。彼は生き延びこの話の締めくくりを語るという演出である。

  さて振り返ってみると要塞側はやる事なす事間違っているわけでそれを映画では糊塗して見えないようにしてある。賞賛すべき事例は何もないというのが普通の見方で栄誉と称号を与えると言うのは政治的なパフォーマンスである。
見ていて嘘っぽい場面が多く、感動とは程遠い出来の映画だった。