東洋文庫 A・ヴァーンベーリ著 ペルシア放浪記 (1889)

  1832年ハンガリーの貧しい家庭で生まれたヴァーンベーリーは辛苦の少年時代を送った後ギムナジウムに進み21歳の時宿願のアジア横断の旅に出る。懐には15フロリンしかなく頼みは数カ国語を話せる語学力のみである。ガラツからドナウ川を下りコンスタンチノープルに入り長期間滞在する。そのうちにハンガリー学士院の通信会員に選ばれたヴァーンベーリーは援助金1600フロリンと紹介状を手にする。周到に準備した後1862年3月いよいよトルコでの安穏な生活を捨て黒海へと出航する。寄港地のトレブゾンドからは陸路である。

  以後の行程はトレブゾンド、エルゼウム、テブリズ、テヘランイスファハン、シラズ、ヒヴァ、ボハラ、サマルカンド、ヘラト、テヘランと進む。その間各地で生活しながら托鉢僧に身をやつし旅を続けた。ヨーロッパへ帰ってきた時はヴァーンベーリーは32歳になっていた。彼のその後の人生は放浪はやめて大学の教授職に就き結婚して書斎を持ち幸福に暮らしたと記している。