映画 鬼火 (1963)

  主人公のアランはきれいな目の美男子だがベルサイユの精神病院で療養している。アメリカ人の妻がいるが彼女はニューヨークに帰っており手紙でやりとりするだけである。アランはかつてパリで仲間達と華々しい生活を送っていたがアル中になりここでこうしているのだ。或る日アランは外出して妻の友人とホテルで会いベッドを共にする。アランはとてももてる男だが交接不能なのである。女はアランの事を慰め小切手を置いて行った。


  精神病院に戻るとそこは議論好きな老人と色ボケした老婦人のいる奇妙な空間だった。アランは院長とチェスの勝負をする仲であるが最近退院を勧められている。みんなからはニューヨークに帰るよう言われるがアランはどうしても帰るのは嫌なようである。かといってパリに戻ったとしたらアル中に戻るだけだと自覚している。アランは自殺する日付を鏡に書きパリに出かけて行く。

  喧騒に包まれたパリの街では車がギアボックスの唸りを上げ走りまわっている。アランの事を女たちがジロジロ見る。小切手を現金に替え友人たちに電話をかけまくるアラン。かつての仲間のデュプールは結婚して所帯を持ち今はエジプトの研究をしていると言う。画家のエバのアトリエに行くとそこは芸術家の巣であり創作のためと称して麻薬が使われていた。アランはかつての恋人だったソランジュの晩餐会に招かれる。客人たちは何かとアランにとげとげしい態度をとるが女たちはアランに同情的だ。コーヒーの後に酒を飲まされたアランは酔った調子でみんなに批判的な言葉を吐いて帰ってしまった。

  病院に戻ったアランは翌朝拳銃で自殺した。自殺する理由は晩餐会の時みんなに告げている。兎にも角にも発展してゆくパリ。精神をやられていない若者はフランソワーズ・アルディやシルビー・バルタンを楽しみながら豊かな生活を満喫すればいいのだ。