元校長の松太郎(緒形拳)は妻に先立たれ娘から人殺しと罵られる。実直に生きてきた松太郎には借金があるわけでも無いが家を娘にやり一人でアパート暮らしを始める。妻を幸せに出来なかったからと言って娘から縁を切られるというのは無理がある。アル中になってしまった妻の自滅だからである。
さて引越し先のアパートの隣人はシングルマザーの真由美でひものような男を同居させている。5歳の少女である幸はネグレクトされ時に折檻を受けている。松太郎は真由美の喘ぎ声と幸の悲鳴を毎日聴くことになる。或る日松太郎は棒切れで武装し男を叩きのめし幸を連れて旅に出てしまう。この旅は幸せだった頃の家族旅行の追憶であり幸に青空を見せてやる旅でもある。ここからはロードムービーになり誘拐犯として刑事に追われるサスペンスにもなっている。
旅の途中で帰国子女のワタル(松田翔太)が同行することになる。不良っぽいワタルとひねくれものの幸の相性は良い。ワタルの目的は拳銃自殺であり二人に絡んだ後池のほとりで自殺を遂げる。これにより松太郎は殺人犯としても追われることになる。刑事役は監督の奥田瑛二だが俗物なのか達観した人物なのか曖昧な設定である。追跡をわざと中断したようにも見える。
結局二人は低い山に登り空と絶景を目に収める。幸は崖からジャンプするが死にはしなかった。最後に松太郎が街に降りて自首をする。
日本の母子家庭におけるネグレクトがテーマのおそらく賞狙いの映画である。シチュエーションは山田太一の春の一族に酷似しているが山田太一のようなセリフの冴えは無い。