映画 冷たい熱帯魚 (2010)

  冒頭と結末にオリジナルのストーリーが付け加えられているが中身は1993年の埼玉愛犬家連続殺人事件の再現映画である。主犯の夫婦は現在死刑囚だが共犯の男が出所して手記を出版しているので映画もなかなかリアルに再現されているようだ。

  主人公の社本がサイコパスの村田に取り込まれ死体解体を手伝わされるまで一気に進んで行く。村田は顧客に大金を出資させては殺してゆく手法をとりながら店を経営していた。契約が終わると毒殺し山中にあるアジトで解体し肉は刻んで川に、骨は灰にしてから山林に投棄する。この事を村田自身はボディを透明にすると称している。これで過去に何十人も殺してきたのだという。

  一方社本は小さい熱帯魚店を経営しながら後妻の妙子と不良娘の美津子と暮らしていた。二人ともボスについてゆくタイプの女なので真面目な社本の事を心底舐めている。社本は戸惑いながらも村田について行くしかなく顧問の男と運転手を殺した後処理も手伝ってしまった。饒舌で陽気な村田は社本の事をいたぶりながら心理カウンセラーのような発言もする。結局追い詰められた社本は窮鼠が猫を噛むように主犯夫婦を惨殺して妻も刺殺するという結末になる。どっちがサイコパスか見せてやるという勢いである。さらに娘に対しては自分で生きて行けと言い残して自害するのである。しかし娘はひるむことなく高笑いして映画は終了した。大変優れた映画だが後味の悪さが結構後を引く。