アルジェの檻 西野雅徳 著 (2012)

  本書は山陽製作所のプラント事業部と江藤商事が組んで(コンソーシアム)アルジェリアの鉄鋼公団(SNS)からアルミサッシ製造プラントを受注し現地でプロジェクトを進めている時に起こった事件の記録である。 

  1984年2月4日午前9時現地の私服警官4名が事務所を急襲し家賃の外貨払いの書類の提出を要求。プロジェクト契約書類、家賃書類、SNSのハムディ氏への支払い書類を押収した上、居合わせた安本係長を署へ連行した。6日には現地責任者の黒岩部長、10日には信濃課長が出頭し拘束された。著者の西野氏は当時監理課長のポストにあったがアルジェリア行きを命じられ7日には日本を出発する。

  ここからは一言で言うと泥沼の展開になるのだが長い格闘の末1987年12月31日に結審する。黒岩部長は経済法違反で禁固4年執行猶予4年となり信濃課長は外為法違反で禁固3年執行猶予3年、安本係長は無罪となった。日本との友好関係に配慮した公平な判決と思われる。日本アルジェリア協会会長の宇都宮徳馬氏の存在があったのは幸いである。

  事件の背景としてはあちら側は必ず賄賂を要求してくる事(SNSのハムディが慈善団体への寄付だと言って要求)、外貨が無いと欲しいものが買えない国の事情がある(家主が外貨支払いを要求)。これに対する会社側の対応が甘かったのである。アルジェリアの当局は真面目に仕事をしたと言えるだろうがラマダン1ヶ月、バカンス2ヶ月というのんびりした国柄である。フランス人弁護士は何だか悪意があるように見える。司法当局、大使館、外務省、社の上層部それぞれの思惑とメンツが交錯し最短コースを進む事が不可能になったと言うのがこの事件の実相だろう。