東洋文庫 石田瑞麿 訳 往生要集 (985)

  恵心僧都源信の著書である。まず冒頭で八大地獄について詳述している。主に正法念経に拠るもので源信が取材した訳ではない。場所は我々の住む世界の地下数キロ?の処に有ると言う。死んで罪人になるとこれらの地獄に落ちて来ると言う。餓鬼の世界も地下にあるが地獄と地上の中間に存在すると言う。畜生、阿修羅の世界があるがこれらは人間の世界と交わる位置に存在する。人間世界について述べている。人間世界も平和という訳ではなく不浄、苦しみ、無常で満ちていると言う。これらの記述は厭離穢土、欣求浄土という思想の論拠になっている。


  極楽浄土は西方の彼方にある。死んだ時に阿弥陀仏がタクシーの様に迎えに来るのだと言う。宝玉をちりばめた樹木、瑠璃の地面には宮殿や楼閣が並び、天人が奏でる伎楽が聞こえている。黄金の池には黄金、水晶、珊瑚、琥珀、シャコ貝、瑪瑙、真珠、赤胴などからなる砂が敷き詰めてある。蓮の花は色々な色の光を放ち、美しい鳥が優雅に鳴いている。死後この世界にやってくる為の秘法がこの本にはいくつか述べられている。例えば文殊の名を口ずさむとか念仏を唱えるとかである。