映画 ボルサリーノ (1970)

  チンピラのシフレディ(アラン・ドロン)の出所風景から始まる。フランス映画はファッションがいやに決まっている。舞台は戦前のマルセイユでギャング団の暗闘がメインのストーリーである。もう一人の主人公カペラ(ジャン・ポール・べルモンド)とシフレディは女を巡って殴り合いになる。が意外にもこの事から二人の間に友情が芽生える。

  その後二人はギャング団の実行部隊として活動し出世街道を驀進する。出世街道といってもギャング団の首領を倒して自分達がその利権を受け継ぐという単純な話である。抗争に勝利しマルセイユの市場の利権を独占した二人は王侯貴族のような生活を手に入れる。マルセイユ警察との微妙な関係も描かれているが警察も事なかれ主義に徹している。これが事実なら相当腐った社会である。
  音楽はなかなか凝っていてシンセのクラビーアのようなピアノが印象的なテーマ音楽を奏でる。クラブで唄われるシャンソンも味わい深い本物である。テーマ音楽を劇中で楽団が演奏する場面、シフレディがメロディーをピアノで奏でる場面がありこのへんからこの映画に非現実感が漂ってくる。登場人物がテーマ音楽を知っているというのはミュージカル映画以外では初めて見た。劇からレビューに移行しますよという線引きのようにも見える。
  最後は二人の仲間割れという皮肉な結末になる。凶弾に倒れたカペラをシフレディが抱きしめる場面は劇場的な演出になっていてもう宝塚歌劇の一場面であると言っても過言ではないだろう。