前略おふくろ様の彼岸

  この辺まで来ると前略おふくろ様の彼岸が見えて来る。パート1の最終回でサブが想像しているようにかすみちゃんと一緒になり田舎で暮らし子供を持つ。その子供が成長し適齢期になりまた恋愛する。だけど子供は老いた両親が同じように恋愛して一緒になった事などは知らないし思いもよらないような態度である。それがサブには少し淋しいと描写される。

  放映当時は両手に花とは羨ましいと思いながらも年齢が近いサブに自分を投影して観ていたが今は彼岸から観ていることになる。

  子育てが終わるまでの25年を舟に例えてみる。結婚して海原に舟を漕ぎ出し陸地を離れる。もう引き返す事は難しい。幸い何処かの陸地に緊急上陸する事もなく、あえなく沈没する事もなく銀婚を迎えれば其処は向こう岸である。子供はなんとか自立し、夫婦も無事でいる。たくさんの想い出も残っている。舟を出す時に立てた計画が上手く運んだのである。この岸には飛行機で飛んでくることは出来ない。5年とか10年では来れないのである。

  お通夜が明けた朝、かすみちゃんがサブにお茶を入れてくれる。かすみちゃんとの家庭生活を想像したサブの心は彼岸を見つめているはずである。