この長大な戯曲は洪昇の作で康熙年間に上演され好評を博した。美文調のト書き、登場人物も詩を吟じながら会話するという構成になっている。作者の詩文の力量も大したものである。訳の一部を写してみる。
玄宗 銀燭は光を回らして 綺羅を散じ
楊貴妃 御香の深き処 寵を蒙ること多し
玄宗 六宮 此の夜 顰を含みて望み
このようにデュエットになっている。史実に基づいており楊国忠、安禄山、史思明も登場する。楊貴妃は死ぬが後半はファンタジーになっており仙術により蘇った楊貴妃は復活して蓬莱山に戻っていた。最後は月宮で玄宗と逢い夫婦として末長く暮らすというハッピーエンドになっている。