陳独秀は安徽省の生まれ、中国共産党の設立者で初代NO.1であるが後に除名され四川省に隠遁し63歳で死去した。本書は雑誌に掲載された政治論集及び漢詩などからなる。
「安徽俗話報」創刊の理由(1904年3月31日掲載)
要するに安徽省には新聞が無い→学校で学ぶにはとてもお金がかかる→安徽省の言葉で作った値段の安い新聞を作りました→国内の最新の情勢を知ることができ娯楽用の読み物も載っている→金持ちも貧乏人も商人も労働者も買って読んで下さいという主張である。
何しろ新聞もないので八カ国連合軍が北京を占領していた頃義和団が勝利したと皆で噂していたくらいである。今の東三省の件(日露戦争)についてもいち早く経過をお知らせしたいと筆者陳独秀は述べている。
「中国の瓜分」(1904年3月31日掲載)
今の国内情勢について述べている。 ロシアはすでに東三省(遼寧省・吉林省・黒竜江省)を占領し、さらに直隷、山西、陝西、甘粛を占領しようとしている。ドイツは山東、河南を占領しようとしている。フランスは雲南、貴州、広西を占領しようとしている。日本は福建を占領しようとしている。イタリアは浙江を占領しようとしている。長江に沿った四川、湖北、湖南、三江の数省は、イギリスの名の下に分けられているという。聞くところでは数ヶ月前にイギリス人は両江総督に三つのことを迫ったという。
1 イギリスが大総督一人を派遣し、南京に駐在させ、長江沿いの各地方を管理すること。 2 瓜州口(長江と大運河が交わるところ)に大軍を駐留させること。 3 長江沿い一帯の要地に砲台を修築すること。
もしそのとおりにしたら東三省におけるロシアと同様、この長江沿いの数省はきれいさっぱりイギリスのふところに入ってしまうのではないか。
『新青年』宣言 1919年12月1日「新青年」第7巻第一号掲載分より一部を紹介する。 われわれが理想とする新たな時代、新たな社会は誠実で、進歩的で、積極的で、自由で、平等で、創造的で、美しく善なるもので、平和的で、相互扶助的で、勤労して楽しく、社会すべてが幸福となるものである。虚偽で、保守的で、消極的で、束縛的で、階級的で、戦争、反目対立があり、怠惰で鬱屈し、少数だけが幸福となる現象は漸次減少し、消滅するよう希望している。
われわれ新社会の新青年は、当然労働を尊ぶ。だが、労働は個人の才能興味に合わせ、自由で愉快な芸術美に昇華すべきで、神聖な労働を衣食維持の条件とみなしてはならない。
なかなか良い社会を陳独秀は思い描いている。だが暴力革命を経て中国が歩んだ道はどちらかといえばやはり後者である。実現手段が非常に難題である事は確かだ。