映画 耳をすませば (1995)

1995年の配給収入一位の映画で18億5000万とある。二位のゴジラVSスペースゴジラ 16億5000万は今回見ない。

原作は同名の少女コミックであるがストーリーは宮埼、庵野、押井が膨らませたという。聖蹟桜ヶ丘を背景美術にしているのでファンによる検証が盛んに行われている。主人公の雫と聖司が多摩丘陵の住宅地を縦横無尽に駆け巡り最後は東京を見下ろす丘に立ち二人で夜明けを見てプロポーズするやりとりがある。少女漫画の王道の様な結末である。

京王線沿線の団地に住む月島一家の構成は図書館司書の父、社会人大学院生の母、大学生の姉、公立中学生に通う雫である。父に似て本好きの雫は受験が控えているにもかかわらず物語の本を読むのに熱中し貸し出しカードから天沢聖司という名前を知る。雫は親友の夕子から恋愛の相談を受けるが夕子の好きな相手が雫のことが好きで雫はさらに上級の男と相思相愛になるというこれ以上ない恋愛勝者の設定である。相手の男は爽やかなルックスで雫に軽口を叩くような男の子だが接して見るとバッハの無伴奏ヴァイオリンパルティータを弾きこなしバイオリン職人になるためイタリア留学を志しているという硬派な一面を見せる。

こういう設定ではまずどんな女子でも落とせるだろう。一方雫の方は何の取り柄もない平凡な少女である。だが雫は発奮して自分も物語を書いて見せると言い徹夜で書き上げた作品を聖司の祖父に読んでもらったりしている。それは「猫の恩返し」という題名の猫男爵と少女のファンタジー小説であり後にジブリ映画にもなっている。これにより成績を落とした雫だがいつか聖司と結婚するという安心感を得て受験勉強に復帰する形で丸く収まるのである。

多摩丘陵でのゆったりとした生活の様子を味わいながら市井の中に凄い人がゴロゴロしている東京らしい雰囲気も楽しめるという映画である。