ウィリアム・アリスター著 キャンプ (1989)

通信兵として訓練キャンプにいた 著者は極秘任務に応募して合格する。だが派遣された先は大英帝国の東の端、香港だった。ネイザンロードを誇らしげ に行軍したのはいいが三週間もすると太平洋戦争が始まり日本軍の進攻を受ける。部隊はあっという間に壊滅し香港島に退却し捕虜となる。ノースポイント強制収容所に送られる。この後は日本鋼管の造船所で強制労働させられる。終戦となり海兵隊が上陸すると本当に解放されたことを実感する。原子爆弾の事を知ったのはこのときである。

青春のエネルギーと希望と悪夢が詰め込まれたような文章だ。カナダに住む青年にとって中国人も日本人も人間じゃない存在だった事が文章から伺われる。この事が著者の精神を一生苛むのである。ドナルド・キーン日本兵の日記を読んで人間らしい一面にすぐ気付いている。晩年著者が日本を訪れてVIP待遇を受けた時も笑顔の向こうにある不気味な本性を見続けていたのである。