夢のオーディオシステム(4)

スピーカーはこうなっている。

ユニットはFOSTEX FE203、スーパーツイーターはテクニクス 5HH10でローカットはuΣ 0.68μのみである。FM fanに掲載された長岡鉄男のオーディオ・コーナーにこのような一文がある。

バックロード・ホーンのメリット・デメリット

バックロード・ホーンについては質問が非常に多い。それは市販品がほとんどないということ。あってもあまりいい音はしないということ。それに常識というか通念というか、バックロード・ホーンはくせの強い、荒っぽい、エネルギッシュな音のするシステムであり、ジャズ、ロック、自衛隊、雷鳴、SL、ジェット機といったものを大音量で聞く時以外はメリットがないという風に考えている人が圧倒的に多いという点も、ユーザを混乱させている原因のひとつと思われる。 よくできたバックロード・ホーンは最高級のSPシステムになりうる。特に、これからデジタル・ディスク、ダイレクト・ディスクがふえてくるとBHはいよいよ真価を発揮する。たとえば外盤で、TELARCレーベルのデジタル・ディスクなどはBHプラスASWのシステムで初めて真価を発揮するソースではないかと思う。 なお筆者のことを、ジャズ、ロック、ドキュメンタリー、パーカッション中心の現代音楽、といった強烈なサウンドだけを聞いているのだと思いこんでいる人がいるらしいので、あらためて弁明しておきたい。筆者の音楽の好みは広く浅くであり、音が出ていればなんでもおかまいなしだが、しかし、趣味としてじっくり聞こうとなると音楽史物中心である。音源としては古楽器と人の声だけであり、再生は容易と考えられがちだが、これは大きな誤りである。ダイナミック・レンジというのは最弱音から最強音までの幅だと考えれば古楽器と人の声というのは最もダイナミック・レンジが広いのである。ロックの主役となっている電気楽器は意外とDレンジは狭い。立ち上がりもそれほどではない。特にレコードとなるとリミッターが充分にかかっているので、Dレンジは一段と小さい。これを誇張してグラフに描くと第6図のようになる。

aがロックだとすると、bは中世、バロックなどの古楽器のソロといった感じだ。aのタイプを再生するのは容易だが、大音量で再生しようとすると、大型耐入力のシステムが必要になる。bのタイプを再生するのはむずかしい。大入力にもへこたれず、微笑入力にも忠実で、立ち上がりもすばやくないと困る。一般に小型システムは大入力に弱く、立ち上がりも鈍い。主な問題点はウーファーにある。軽量コーンのウーファーで充分な低音が再生できなければダメだ。またウーファーにネットワークを入れると立ち上がりが悪くなるので、ネットワークなしで使えるウーファーか、マルチ・アンプ方式でないとダメだ。そこでバックロード・ホーンなのである。

筆者がバックロード・ホーンを愛用しているのは音楽史レコードの再生に最適と信じているからである。そうでなければあんな不細工なものをリスニング・ルームの正面に据えたりはしない。もちろん、高能率、高耐入力ということからジャズ、ロック、ドキュメンタリーにも有利であり、特に「日本の自衛隊」の火器の発射音は、このスピーカー以外では再生不可能と思う。たとえば1本100万円のスピーカーでも、この発射音はみごとに鈍化し、火薬のしめったプラスチックの鉄砲(?)みたいな音になってしまうのである。

バックロード・ホーンの欠点はというと、いろいろある。フル・レンジ1発のバックロード・ホーンは、せいぜいがんばって第3図程度のレンジであり20Hz〜50kHzといった超ワイド・レンジは不可能であること。ただしこれは決定的な欠点ではなく、スーパー・ウーファー、トゥイーター、スーパー・トゥイーターの追加でレンジはいくらでも拡大できる。欠点としては可聴域の主な部分をフル・レンジでカヴァーしているので、この帯域でのf特をまったいらにすることは不可能なこと。分割振動はさけられず、歪みも多い。ホーンのくせも出やすい。ただ、くせは抑えることが可能であり、バックロード・ホーンの成否はくせがどこまで抑えられたかできまるといってもよい。その他、強力な電源を持った、ダンピング・ファクターの大きいDCアンプを必要とするといった点も欠点といえないこともない。

この図をもとに作った。本当に満足な音が出たのは去年くらいなのでパワーアンプとプリアンプをどうするかがとても重要である。今の音は柔らかくて美しく、オーケストラの咆哮が静寂の余韻に戻るところが素晴らしい。その秘密は速度特性にあるだろう。

このエンクロージャーにMFBー20を装着して過渡特性を見た実験がある。速度特性はFE203なみのQ=0.2くらいにしてある。