映画 魔女の宅急便 (1989)

大人の黒い事情が見え隠れする宮崎駿の創作と違って、このストーリーは何もないすっきりしたものである。舞台はヨーロッパ、主人公の魔法少女キキがパン屋の屋根裏部屋に住み込みで手伝いしながら宅急便を開業する。失敗もあるが黒猫のジジとともに仕事をこなしながらだんだん成長して行く。飛行船の事故が起こるとキキはその能力を活かして少年を間一髪で救う。めでたしめでたしとなり暗い影はどこにも落ちていないのである。

キャラの作り方はいつものパターンで女子は明るく猪突猛進タイプ。思っていることを口に出すので深みがない。男子はまじめで積極的。トンボという少年が出てくるが今回はウォーリーのような風貌の三枚目だったのでキキは最初は鼻も引っ掛けない態度をとる。だが他にライバルも皆無という状況でトンボが人力飛行機に全力で取り組む姿勢を見て見直したのか、二人はだんだんとカップルのような感じになる。ジブリの物語のテーマは女の子の自立、恋愛、幸せの追求であり現代日本の望まれる女子像とほぼ同じ線を狙っている。逆に言えばそこに無理が生じることになる。