今回初めて見る映画だがデビッド・リンチ監督の作品ということで芸術作品だなと思って見る。50年代アメリカンポップスが流れ、明るさとともに一種の退廃を醸し出しているが画面はというと陽光にあふれたこじんまりとした一軒家が舞台として現れる。この家の庭で水を撒いていた老人が虫に刺されたか卒中になったかして倒れる。この家の軒下には見たことのない様な害虫が蠢いておりパニック映画を予感させるが単なる暗示に過ぎなかった。
このために大学を休学して帰ってきた息子のジェフリーがしばらく店を手伝う事になる。ボーモント金物店である。ある日ジェフリーが野原を通りかかると切断された人間の耳が落ちているのを見つける。これを警察署に届け現場検証にも立ち会いこれで普通なら終わりである。だがジェフリーの持つある信条からこの事件を詳しく調べて見極めたいと思う様になる。これには担当のウィリアム刑事の娘サンディにも責任がある。捜査情報を少しだけジェフリーに漏らすのである。
これを元にジェフリーはドロシーという歌手のアパートに忍び込み起こっていることを目撃する。だがドロシーに見つかり最初は警戒されるがだんだん深い仲になる。しかも情夫で犯人のフランクにも見つかり車で連れまわされリンチを受ける。さいわい命は助かり事件の全容も解明した。ウィリアム刑事にも報告し事件から手を引いた。
ここからがまた修羅場となるのだが運良く犯人グループは自滅し最後のラスボスであるフランクもジェフリーがピストルで仕留める。最初は探偵ごっこだったのが年上女性との不倫と犯人射殺まで経験してしまう。大学生にしてはきつい経験だと思う。きっとトラウマになるだろう。
このフランクという人物の嗜好が薬物と暴力であり、ナイトクラブ風の音楽と衣裳への偏愛、変態性欲の持ち主であるという設定が深い闇を作り出し、単なるサスペンス物とは違った一種の芸術性を醸し出しているのである。