中国の講談は日本と呼び方が異なり「説書」と言う。明末〜清初期に活躍した南京の柳敬亭は水滸伝を得意とし予約制で一回一両を取っていた。彼の演じる様子は張岱の陶庵夢憶(岩波文庫)に記されている。本書では6編がわかりやすい口語体で翻訳されている。
武松の虎退治 (水滸伝より)
清河県出身の武松は眉目秀麗、大変腕の立つ男で酒も強かった。殺人の咎で逃亡し二年ほど河北の紫進の処で世話になっていたがこの度兄のいる山東の陽谷県へ帰る事になった。県境まで来ると一軒の茶屋があり武松は酒を所望する。この酒が三杯飲めば峠を越せぬと言う酒で武松は俺なら三十杯飲んでも平気だと言い実際飲んでしまう。フラフラになり峠に向かうと其処は人食い虎が出るという山道であった。
この後は略すが大虎を一匹退治して県知事に表彰される事になる。シチュエーションの設定が面白い。聞き手はあくびをする暇もないだろう。龐統(ほうとう)の名裁判 (三国志より)も面白かった。人物が出来ているのか出来ていないのか劉備と龐統の面会シーンから面白さ爆発である。張飛と諸葛孔明も登場する。