映画 ピクニック (1955)

何度見てもシュールでじわじわ来るいい映画だ。この主人公の男ハルは立派な見栄えのする流れ者で朝一番の貨物列車でこの町にやって来た。すると最初に朝食をご馳走になったおばあさんを魅了し、隣に住む町一番の美人マッジも虜にする。下宿人の独身教師ローズマリーも彼とマッジがピクニック会場で踊るのを見て嫉妬に狂い発狂する。だがハルは完璧な女たらしと言うよりは素朴で弱気なダメ男の一面も見せる。

マッジの妹ミリーも周りから不細工と言われるが結構美人でピクニックではハルにエスコートされ踊ったり酒を飲んだりする。ここカンザス州では禁酒法で酒は飲めない事になっている。姉妹の母フローは町一番の金持ちの御曹司とマッジが早く結婚する事を望んでいる。すでに二人は親密な関係でデートを重ねていたがピクニックの夜に深い関係になる事をこの母は願っている。

夏休みの最終日に町の人が郊外に集まってゲームやダンス、クイーンコンテストを行うのがピクニックというイベントである。予想通りマッジがクイーンに選ばれた。ミリーとハルが踊っているのを遠くから見たマッジは近づいて行ってハルとキスをする。これを見たミリーは酒を飲んでぶっ倒れ、教師のローズマリーは発狂してハルの来ていたシャツをビリビリと破る。この騒ぎに気づいた御曹司はハルを裏切り者と詰るのだがハルは御曹司から借りていた車にマッジを乗せて遁走する。車にはマッジ自ら乗り込んだのである。

一方発狂したローズマリーはその夜のパートナーだった独身男性の文具店店主ハワードに結婚を迫り嫌がるハワードと翌日無理やり結婚してしまう。ローズマリーがハワードにすがりつく場面は今のお茶の間では流せないだろう。結局ハルは他の町でホテルボーイとして出直すと言い残して貨物列車に乗り去って行った。マッジはと言うと母親が止めるのを聞かずに荷物をまとめてハルの元へ行くのである。

劇作家による作品だけあってセリフが強烈で見る方がびっくりする。ミリーをもう少し不細工にして御曹司をブ男に、最後にマッジが御曹司を選ぶ様にすれば現実性、リアリズム性が増すがこの映画の結末もなんだこれはという感じで面白い。