新進脚本家リチャードは八年前の変な出来事の謎がふと泊まることにしたグランドホテルに隠されていることに気づく。謎とは大学でリチャードの処女作を公演した後に身なりのいい老女が近づいて来て懐中時計を手に握らせて「帰って来て」と呟いた事件である。ホテルの資料室でじっとこちらを見ている美人の古い写真に何かを感じたリチャードは彼女がエリーズ・マッケナという女優であり1912年にこのホテルのそばにある劇場で公演を行なった事をホテルマンのアーサーから聞き出す。
リチャードは図書館でエリーズに関する資料を調べエリーズの元メイドに接触しエリーズの亡くなった日が処女作公演の日、愛聴曲が自分の好きなラフマニノフの曲、愛読書が「時の流れを超えて」である事をつかむ。直ちに著者の大学教授に面会し時間旅行の方法を聞き出してそれを実行する。ホテルの古い宿泊簿には1912年の公演当日に自分の名前があるのを確認してある。時間旅行の方法は一種の催眠術で古い物に囲まれて暗示をかけるという方法である。リチャードが目覚めると景色が変わっていてそこは1912年のホテルの一室であった。
この後の展開はわりとありきたりで二人は相思相愛になり体の関係まで行くのである。しかしつい気が緩んだリチャードが現代に引き戻されて二人は永遠に会えなくなる。いや会えているのだが62年の時間差が壁の様に立ちはだかるのである。リチャードは絶望のあまり廃人となり薄れ行く意識の中で彼女と再会する。
最後は中国の志怪小説もどきになったが、ビジュアルも音楽も最高の出来であり結構しみじみと心にくる。