渚にて ネビル・シュート(1957)

SFの名作「渚にて」を読む。要旨を書き留める。T.S.エリオットの意味深なエピグラフもあり本格的な作りである。

(P.1〜P.123) オーストラリアの海軍少佐ピーター・ホームズはある朝眼を覚まし、幸福感に浸りながら今日の予定に想いを巡らしていた。7ヶ月仕事が無かったピーターは今日海軍事務所に出頭し辞令をもらう日なのである。まだ赤ん坊のジェニファーと妻のメアリーもいる。庭付きの一軒家のガレージには古いモーリスが収まっているがオーストラリアではもう石油が手に入らないので二台の自転車と手作りの二輪トレイラーで用をまかなっている。朝食を済ますと自転車で駅へ向かった。

一時間ばかり電車にゆられているとメルボルンに到着した。石炭による火力発電で電気は通じている。オーストラリア海軍は石油不足の為稼動できる艦船はなく飛行機も事実上飛べない状態だが今回の任務は米軍の原子力潜水艦スコーピオン号に連絡将校として乗船することだった。スコーピオン号は放射能で壊滅した北半球を逃れてオーストラリアにやって来た貴重な稼動できる艦船である。その日は艦長のタワーズ中佐に会い親睦のため自宅のパーティに招待する。

さて次の土曜日牧場主の娘モイラと三組の夫婦を招いてパーティが開かれモイラはタワーズ中佐を接待する。パーティの前にヨットレースがあり中佐とモイラが出場する。中佐は釣りが好きな海の男である。ヨットが転覆しモイラのブラジャーが外れるというハプニングがあったが楽しくレースは終了した。蓄音機の音楽とダンスを楽しんでパーティはお開きとなった。モイラはブランデーとウイスキーで酔いつぶれる。中佐はホームズ邸に一泊し翌日教会で礼拝し帰って行った。モイラと中佐との会話の中で北半球の各都市の状況が語られる。ニューギニアポートモレスビーもすでに放射能で覆われているという。

次の週モイラの申し出でモイラは潜水艦の見学に招かれる。ここでもモイラは中佐をホテルのバーに誘いお酒を飲んだが見学中に失態を演じることは無かった。モイラはオスボーンという科学者も乗船する事を聞くが彼はモイラのいとこでお互いよく思っていない事を中佐に告げる。スコーピオン号はケアンズポートモレスビーダーウィンと周りメルボルンに帰って来た。各都市には生きている人も鳥も確認できず犬が一匹いただけだった。