バロネス・オルツィ 紅はこべ (1905)

フランス革命後の混乱期に登場した秘密結社紅はこべ団を描く活劇ストーリーである。1792年のパリでは革命政府が貴族の根絶に乗り出し外国勢力と通じたという理由で貴族らを次々とギロチンで処刑していた。恐れおののいた貴族らは逃亡を図るがパリの4つの城門で捕らえられギロチンにかけられるのであった。各国政府が介入を躊躇している中、英国のパーシー・ブレークニー準男爵(バロネット)が19人の仲間達とフランスに命懸けで潜入し貴族達を救出する作戦を開始した。第1章パリー1792年9月では警備に当たる守備兵の裏をかいてまんまと逃亡に成功する紅はこべ団の様子が描かれる。その鮮やかで痛快な手口はルパン3世に通じるものがある。逃亡を許したグロースピエール隊長はその責めを負ってギロチンにかけられるという皮肉で滑稽な展開も描かれる。

第2章ドーヴァー港の漁師宿では主人のジェリバンドと美しい娘サリーが登場し、そこへ亡命してきたフランス人貴族が宿泊する。そこへブレークニー準男爵と令夫人(フランス名マーガリート・サンジュスト)が現れ一波乱が起こるのである。マーガリートは元女優で絶世の美女であるがその親族が対立する貴族を密告するなど複雑な設定が為されている。以下は長くなるので省略する。

この小説は英国でベストセラーとなり映画やドラマも作られている。宝塚歌劇団でも「スカーレット・ピンパーネル」の題名で公演がなされている。なぜか少年少女世界文学全集には取り上げられていない様である。