東洋文庫 道教 (1945)

本書はフランスの東洋学者アンリ・マスペロの長年の研究資料を元にP・ドミエヴィルが本にまとめたものである。アンリ・マスペロはナチスに連行され61歳のとき収容所で病死している。

本書は充実した深い内容を有し道教研究の古典とも言われている。以下本文の一部を紹介する。

(西暦初頭数世紀の道教に関する研究より)

(1)錬金術の実践

(略)

錬金術的方法は本質的には丹(硫化水銀)の調合と服用にある。

(略)

それは複雑な、かつ高価な技術である。なぜなら、丹をそのままで飲むのではなく、一連の調製工程をそれにほどこさねばならないからである。

(略)

私はただ若干の一般的な指摘を《抱朴子》から借りてのべるにとどめよう。この書物は、すでに何度も引用したように、四世紀のはじめの錬金術師が書いたものである。丹を、昇華した形で得るためには、丹砂を九回「還す」、つまり丹砂から水銀へ、水銀から丹砂への質的転換を九回おこなわなければならない。

(略)

一回の変質をうけた丹砂(一転丹)を服用するものは、三年で永生者となるであろう。(略)九回の変質をうけた丹砂をのむものは三日で永生者となるであろう。

(2)食餌法の実践

(略)

死の原因となるものは、穀物を常食とする習慣である。

(略)

(3)呼吸の実践

(略)

この特別に追加されたコースは、呼吸する息の普通のコースよりも異常に長くなる。したがって、この修行を実践するためには、上へも下へも気をもらさずに、できるだけ長く「気を閉じこめておくこと」(閉気)ができなければならない。

引用終わり

錬金術師はこれらの修行を成就することによって不死が得られるのである。