プルースト 失われた時を求めて (1908〜1922)(1)

「いよいよプルーストの小説全14冊を読む時期が到来した。」と閃いたのは僕が図書館で書棚の下の方を見た時である。こんな事が出来る人生はいい人生である。

冒頭の「眠ろうとして目を閉じた後の想念」についての長々とした記述は主に過去における自分の寝室の記憶を辿って行くものだが、人生とは全くこの繰り返しであると言える。だが若い頃のそれと老いてからのそれは全く異なっている。本文を少し引用する。(吉川一義訳)

《たいていの場合、私は、すぐに再び眠りこもうとはせず、コンブレーの大叔母のところや、バルベックや、パリや、ドンシエールや、ヴェネツィアや、その他の土地ですごした私たちの昔の生活を想い出したり、そんな土地や、そこで知り合った人たちのこと、そんな人たちについて私が見たり聞いたりしたことを想いおこしたりして、夜の大半をすごしたのである。》

《généralement je ne cherchais pas à me rendormir tout de suite; je passais la plus grande partie de la nuit à me rappeler notre vie d’autrefois à Combray chez ma grand’tante, à Balbec, à Paris, à Doncières, à Venise, ailleurs encore, à me rappeler les lieux, les personnes que j’y avais connues, ce que j’avais vu d’elles, ce qu’on m’en avait raconté.》

これは晩年の事象である事は言うまでもない。