失われた時を求めて (8)

ユーラリという老婆の話が出て来る。耳が遠く、足が不自由で、わずかな年金で教会の脇の部屋で暮らしている。これがレオニ叔母のお気に入りであった。実に口が上手く、レオニ叔母のやや取りつく島の無い、頑なな心を満足させるからである。例えばこのようにである。以下引用文。(吉川一義訳)

《奥様のようにご自身の病気をご存知でしたら、オクターヴの奥様、きっと百まで長生きなさいますよ。きのうもサズランの奥様が、またそうおっしゃっていました。》

これに対するプルーストの分析がまた素晴らしい。以下引用文。

《要するに叔母が必要としていたのは、おのれの療法に賛成し、おのれの苦痛に同情し、なおかつ予後について安心させてくれる人だったのある。》