失われた時を求めて (37)

無事アルベルチーヌとカップルになれたプルーストは、アンドレ、ジゼルとも親しくなり性格のいいアンドレ、ルックスのいいジゼルにも触手を伸ばそうとする。が、はっきりした事は書いてない。プルーストはアルベルチーヌとともにエルスチールのアトリエを訪ね芸術談義に花を咲かせる。特にヨット、ファッション、ヴェネチアの話題で盛り上がっている。

又、アンドレ、アルベルチーヌ、プルーストで農園レストランに行きオヤツを食べたり、断崖まで登りサンドイッチやケーキを食べたりした。プルーストはチョコレートケーキやタルトが好きで、それらには一家言を持っている様である。断崖の上で寝そべると牧草地のつらなりと蒼い海、水色の空が見えたという。ここでのイタチまわし、なぞなぞの遊びはプルーストを夢中にさせ、ヴィルパリジ夫人やサン=ルーの誘いを断るという不義理を重ねる事になった。プルーストは友情こそ偽りの関係であり、少女たちとの交友が真実であると雄弁に綴っている。

だがプルーストは鈍臭いのか、イタチまわしでアルベルチーヌの手を握ろうと画策し失敗、ホテルに宿泊したアルベルチーヌの部屋で呼び鈴を押され恥をかくというこれも失態を演じている。

期待に胸を踊らせてアルベルチーヌの部屋に向かうプルーストの脳裏に去来する迸るような文言がこの巻のクライマックスになっている。そして掉尾には娘たちとの出逢いを振り返りながらの反省会のような文章がある。以下引用文。(吉川一義訳)

《要するに、遠くからは格段に美しく神秘的に見えた事物や人物もそれに充分近づいてみれば美もなければ神秘もないと了解するのは人生の問題を解決するありきたりの方法である。》(第四巻終わり)