失われた時を求めて (50)

(ヴィルパリジ侯爵夫人邸での茶会の続き。)この茶会はとんでもない。スワン夫人が現れたと思うと、シャルリュス氏も現れる。内容を実況する。以下引用文。(吉川一義訳)

《シャルリュス氏はほどなくスワン夫人のかたわらに腰をおろした。どんな会合に出ても、男たちなど歯牙にもかけずご婦人からちやほやされる氏は、たちまち一番エレガントな婦人のそばに寄り添って離れず、その衣装でわが身を飾りたてられた気分でいる。》

スワン夫人の元へプルーストが行くとこのような会話がなされた。以下引用文。(吉川一義訳)

《「ノルポワさんて、感じのいいひとですね。」と私はその本人を示しながらスワン夫人に言った。「もっともロベール・ド・サン=ルーに言わせると疫病神だそうですが・・・」

「その通りです」と夫人は答えた。(略)「きっとこのことですわ、サン=ルーさんがあなたにおっしゃりたかったのは」と夫人は私に答える、「でもあの人に言っちゃダメですよ、口の軽い女だと思われてしまいますから、あたしだってあの人から評価してもらいたいんです。ほら、あたしってとっても『オネットム』でしょ。ごく最近シャルリュスがゲルマント大公妃のお宅の晩餐に出たところ、どうしてだかあなたのことが話題になったんですって。そのときノルポワさんがこんなことを言ったそうなのーーばかばかしいことなので気になさらないでね、だれも大したことと思わなかったそうよ、なにぶん言った人が言った人ですからーーあなたはほとんどヒステリーのおべっか使いだって。」》

プルーストが狼狽したのは言うまでもないが、この後いろんな人に会話で切り込んでいった。優しくしてくれるのはマルサント夫人くらいのものだった。