カンガルーノート (4)

しばらく温泉地での話が続くかと思ったら意外にも次の場所に移動する。トンネルから鉄砲水が噴き出してきて主人公はベッドごと流されて行く。着いたところはキャベツ畑、気がつくと満月の夜、三味線を持った老婆が現われる。顔には皺が刻まれていて眼が無い。老婆は主人公の事を「この親不孝者!」と一喝する。死んだはずの母なのか。自分は三途の川をもう越えてしまったのか。

そこへトンボ眼鏡の看護婦が現れて嫌がる老婆から採血する。採血された老婆は看護婦に促されて退場する。農道から通学途中の子供らがやって来てベッドの上の二人を囃すが、「もうやった後だ」と言うと残念そうに帰っていった。お腹が空いた主人公はラーメン屋でラーメンを啜る。

この章は言葉のやり取りといい、場面設定といい、前衛舞台芸術の様相を現している。小説と戯曲のハイブリッド形式である。親離れ、子離れに言及した場面でカンガルーが引き合いに出されている。