失われた時を求めて (135)

プルーストは皮肉を込めたいい文章を書く。思ったことをスパッと書いている。以下引用文。(吉川一義訳)

《ワルツを踊っていた女にかくも巨大な肉体を与えることができ、歩行に困難をきたした女の動きをメトロノームのように遅くすることができ、たしかに昔よりは頬は広くなったものの若いときから紅斑のあった両頬を唯一の共通部分として、身軽なブロンド女をこんな太鼓腹の老元帥みたいなすがたに変えることができたとは、さぞや人生は、尖塔を丸屋根に置きかえる以上の破壊と再建をなしとげたにちがいない。》

こちらはスパッと書き過ぎているのではないだろうか。

《醜すぎる婦人たちは、顔になんらかの歪みを備えていたとはいえ、美しい婦人たちに勝るいくつかの利点を持っていた。第一に、この婦人たちだけはすぐにそれと見分けがついた。そんな形の口がパリに二つとないのは周知のことで、もはやだれがだれだか判然としないこの午後のパーティーでも、その口を見れば私にもだれと判別できたのである。第二にこの婦人たちは歳をとったように見えなかった。老いというのは人間的なものであるが、この婦人たちは怪物だったから、クジラと同じで「変わった」ようには見えなかったのである。》