映画 チャンピオン (1949)

無一文の若者がボクシング界に足を踏み入れ、絵に描いたように才能を発揮し、頂点まで登り詰めるという古典的な話である。主人公のカーク・ダグラスの役どころは粗野な感じもするが、女性には気の利いた受け答えもし、衝動的なところもあるが計算づくでもあるという人物でありそれほど単純ではない。

話の展開は明快というよりは現実味を帯びたものになっていて常にプラスとマイナスが現れ、主人公の選択によって運命が変わってゆく。最後に兄弟の確執が出てしまい、このマイナスの精神状態がタイトルマッチの試合において悲劇的結末を生むのである。これもまた一見兄弟愛のようにも見えるし、ブロンド美人を見てからの大逆転は欲望にスイッチが入った結果のようにも見える。

主人公は何も言い残さずに世を去ったので、負けず嫌いがそうさせたのか、自殺のようなものなのか、謎が余韻として残る作品である。