川端康成 抒情詩 (1932)

『物質のもとや力が不滅であるのに、知恵浅い若い女の半生でさえさとられずにいられませんでした魂の力だけが滅びると、なぜ考えなければならないのでありましょう。魂という言葉は天地万物を流れる力の一つの形容詞に過ぎないのではありますまいか。 霊魂が不滅であるという考え方は、生ける人間の生命への執着と死者への愛着とのあらわれでありましょうから、あの世の魂もこの世のその人の人格を持つと信じるのは、人情の悲しい幻でありましょうけれど、人間は生前のその人の姿形ばかりか、この世の愛や憎しみまでもあの世に持ってゆきますし、生と死に隔てられても親子は親子ですし、あの世でも兄弟は兄弟として暮らしますし、西洋の死霊はたいてい冥土も現世の社会と似ていると語りますのを聞きまして、私は返って人間のみ尊しの生の執着の習わしを寂しいことに思います。』

霊感のある少女の口から語られたこの思想は、川端康成がおそらく確信しているレベルのもので、いくつもの例証があるのだろう。ここではSir Oliver Rodgeの”Raymond ; OR,LIFE AND DEATH" について述べている。第一次世界大戦で戦死した息子の霊界からのレポートであるという。原著ならKindleで読むことができる。また今回の話とは関係ないが、ローズマリー・ブラウン女史の霊界音楽のCDがあり(ローズマリーの霊感〜詩的で超常的な調べ)、リストやショパンなどのこの世では未発表の曲を聴くことができる。

ただこの分野に深入りすると残りの人生がまずいことになる可能性大である。東洋文庫の連読に戻ろう。