フォークナー 八月の光 (2)

この町の製板工場でのエピソードが語られる。語り手はバイロン・バンチである。三年前にフラリとやってきたクリスマスという男について観相学的に語っている。

《靴は埃だらけだしズボンは汚れていた。しかしズボンは質のいいサージで筋もきちんとついており、ワイシャツは汚れてはいたが白であった。それにネクタイもつけ、帽子は新品の固い縁の麦藁帽で、それを無表情な顔の上に傲慢で依怙地そうな角度にかたむけてのせていた。その様子はルンペン特有の服装をした常習的浮浪者とは見えなかった。しかしまたいかにも根無し草といった感じがあり、いわばどの都市も町も彼の住処でなく、どの通りもどの壁も、一寸の土地さえ彼の家ではないといった感じをはっきり漂わせていた。》

この男は黙々と働いて、副業に酒の密売を行なってお金ができると辞めていったのである。

もう一人彼の相棒となる男についても語られるがそれは省略する。