岩波文庫 メノン プラトン著 (BC5世紀)

近隣の都市から来た青年貴族のメノンに対して行ったソクラテスの講義のようなもので、これが哲学だと言えるものだ。

メノンの質問とは、

「徳とは教育によって教え得るものか?」

というものであった。ソクラテスはそもそも「徳」について誰も知らないと言うことを順次論証して行くが、メノンの見解も尋ねてみた。メノンはこう述べた。

《まず男の徳とは何かとおたずねなら、それをいうのはわけないこと、つまり国事を処理する能力を持ち、かつ処理するにあたって、よく友を利して敵を害し、しかも自分は何ひとつそういう目にあわぬように気をつけるだけの能力をもつこと、これが男の徳というものです。さらに、女の徳はと言われるなら、女は所帯をよく保ち夫に服従することによって、家そのものをよく斉えるべきであるというふうに、なんとなく説明できます。そして子供には、男の児にも女の児にも、べつにまた子供の徳があるし、年配の者には別にまた年配の得があって、それもおのぞみとあらば、自由人には自由人の徳、召使いには召使いの徳があります。》

これはこれで論語風で正しい感じもするがソクラテスは哲学を用いてコテンパンに論破し、最後は実例を挙げて徳について教育する事は出来ないと主張する。この時のソクラテスの知識量の多さには少々驚いた。ついでに幾何学の講義も行なっている。

この文化がローマに引き継がれ、ルネッサンスを経て科学技術に発展したことを思うと身震いがするのである。