映画 シチリアシチリア (2009)

この素晴らしい映画はジュゼッペ・トルナトーレ監督の故郷バゲーリアの町を再現して、主人公の少年ペッピーノが成長し、晩年になるまでを描いたものである。ペッピーノは監督の父に当たるとされている。 貧しい生まれのペッピーノは牧童をしたり、牛乳売りをしたりして家計を支えていた。学校では女教師に耳を引っ張られるなどの虐待を受けるというエピソードがある。この時代はムッソリーニが勢力を伸ばしていた頃で、黒シャツ隊と市民とのトラブルが描かれている。シチリアの黒シャツ隊はファシストにしてはユーモラスな感じである。

ペッピーノはやがて青年になり妻になるマンニーナを見初めて結婚する。シチリア島は大地主が横暴なことをする土地柄で、それに反感をもつペッピーノは共産党に入党する。新婚の生活は苦しく、出稼ぎをしたりするが有能なペッピーノは共産党の幹部として出世して行くのである。集会を開き選挙キャンペーンの演説をする。モスクワに出張して共産党の総本山を見学したペッピーノは、そこで恐ろしいものを見たという。それが何であるかは特に明かされなかった。ペッピーノは国会議員の選挙に出馬するが落選して、あとは故郷でゆったりと晩年を過ごすことになる。成長した息子のピエトロが列車に乗り故郷を離れる時の会話は次のようなものである。「納得していないようだね。」「だからいいんだ。」ペッピーノ一家は裕福になれなかったし、周りからも良く思われてはいない、ピエトロはそのことを気にしているが、父の言葉にちょっと安心したのではないだろうか。