岩波文庫 君主論 (2)

ゆっくり読んでいると面白い。このような記述がある(p75)。

《その上さらに、民衆を敵にまわしたならば、その数があまりにも多いために君主は身の安全を保ち得ないが、有力者たちならば、数は少ないから身の安全は保ち得る。民衆を敵にまわすことによって、君主が想定しうる最悪の事態は、彼らに見放されることだが、有力者たちを敵にまわしたときには、単に見放されることだけではなく、彼らが刃向かってくることをも恐れねばならない。なぜならば、彼らはなるべく遠くまで先を見通そうとして、さらなる策謀をめぐらすうちに、つねに先走ってわが身の助かるみちを考え、勝利を収めそうだと予期される人物には褒賞を求めて近づくから。》

K省で起こった事件をぼんやり見ていると、いつもは威張っている官僚も、当事者としては最弱なのでものすごいスピードで海外に逃げたのだなと思ったけれど、マキアッベリの見方が鋭い。つまり、わが身の助かるみちを考え、策謀をめぐらせたというのが正解である。その後の一連の出来事もこの線で行われたことである。