映画 預言者 (2009)

主人公のタリクが投獄されてから6年の懲役刑を終えるまでの物語である。タリクはアラブ系フランス人だが孤児だったので出自は不明である。獄中を仕切っていたのはコルシカ人のマフィアで、ボスのセザールがタリクに目をつける。タリクは使い走りとして奉仕させられる。最初の役目が獄中での殺人だった。その後は外出時に仕事をさせられるが上手にやり通す。暴力も受けたし随分腹に据えかねたのか最後の暗殺の仕事で寝返ってセザールに復讐する。これによって獄中で没落したセザールを尻目に刑期を満了したタリクはシャバに復帰する。

とこういう話だが、カンヌグランプリだけあって芸術ぶっているわりには内容の無い映画である と考えても当たらずとも遠からずと言えるだろう。タリクが獄中で学んで成長し、何者かになったのか。まあタリクはコルシカマフィア以外の仲間と反社会的勢力として今後も生きて行くらしいし、預言者というほどのこともなく、ただ殺した相手の幻影を見た程度のことである。監視の厳しい獄中での完全犯罪などできるわけがないし、テロの場面で最も敏感なはずの市民と警察が無反応というのも違和感がある。現実を無視したファンタジー的な脚本であると言える。サスペンス映画としては視点不明の問題作である。