映画 皆月 (1999)

冒頭の文学的な置き手紙を残しての妻の失踪からの主人公の非日常は100%新宿の裏社会の解説である。主人公のオッサンはゼネコンに勤めるサラリーマンだったが妻の失踪に呆然としながらも会社を辞めて、ヤクザをしている義弟の組に入れてもらう。そこでソープランド、キャバクラを体験し、公然と行われるリンチを体験しながらいつのまにかソープ嬢の情夫になるのである。

義弟のアキラ(北村一輝)は正真正銘のサイコパスであるがオッサン(奥田瑛二)も奥手でもっさりしているが中身はサイコパスのようなものである。この二人とソープ嬢のユミが駆け落ちした妻をワゴン車に乗って能登半島に追いかけてゆくというロードムービーになる。このようにキャスティングは異様な程的確であり、失踪するまでの妻の日常も描かれる事も無く伏せてあるので、一体どんな妻が現れるのだろうという期待と、ロードムービーの一種の解放感もあって観客を引き込む力がある映画だと思う。

文学的な香りもあり、付随音楽も適切なオリジナルだし、エンディングには山崎ハコの新曲が付いていて華麗な安田裕美のギター伴奏もあるという、こだわって作られた映画である。名作の部類に入るだろう。