映画 ブルク劇場 (1936)

ブルク劇場専属の名優ミッテラーはプロンプター兼執事のゼードルマイヤーと気ままな二人暮らしをおくっていた。ファンに取り囲まれるのを嫌がり、男爵夫人のサロンへの招待も全部断っていた。ところがある日散歩の途中で教会で見かけた仕立て屋の娘レニに一目惚れする。レニには駆け出しの若手俳優の彼氏がいた。

まあこういった設定で始まるストーリーだが、印象としてはシリアスな感じのコメディーである。現実世界では権力を持つ老人が若者を潰したり、美人が意に反した結婚を強いられたり、破局が訪れたりするものだが、この映画では老人が意外と慎み深く、若者の邪魔をしないのである。ウィーンといえばモーツァルトマーラーなどが活躍した都である。映画の頃は国内でナチスも台頭していたはずである。この映画では現実の悲惨さがあまり表に出てこず、心温まるような結末となっている。