映画 Wの悲劇 (1984)

テーマとしては女優を目指す劇団研究生がオーディションを経て有名劇場での公演に至るまでの経験を描いたものだが、単なるサクセスストーリーではなくとても複雑なものになっている。

 Wの悲劇というのは和辻家で起こる殺人を主題にしたサスペンス小説であり、本作の劇中劇になっている。つまりさわりだけが演じられるが演出家として蜷川幸雄が起用されており、また芸能レポーターとして梨本勝が、という風に自由なキャスティングが行われている。音楽担当久石譲、主題歌呉田軽穂と総力を結集した感じがする制作姿勢にもちょっと驚いた。

 後半の大阪公演からサスペンスの風味が加わり、古典的な犯罪トリックも登場するが本編には刑事コロンボが出てくる余裕はなく、劇中劇に警部が登場している。

 まだ日本がバブルだったこの頃は人々に成功への夢や憧れがあったかもしれない。その事が思い出された。