映画 愛の果てへの旅 (2004)

 スイスの老舗ホテルを宿にして暮らしている謎の中年男、引退した大金持ちの様にも見えるこの主人公がズームアップされる。彼は他の宿泊客達と食事やカードゲームもするが、日常はこれといった事もなく、風体としては大手銀行の役員に見えなくもない。実際のところはマフィアの集めた大金を銀行の口座に入金するのが仕事である。銀行の方も上客として扱ってくれている。

 快適そうではあるが虚しい生活に転機が訪れる。口先だけで銀行から騙し取った10万ドルで高級コンバーチブルを買い彼女にプレゼントする。彼女とはドライブの約束をするが、その直後にパルプフィクションの様な事件が起こり、悪党に大金を持って行かれてしまう。この後の展開はかなり意外なものであり、結局彼女には振られたのか、奪い返した大金をどうするつもりだったのか、よくわからない点がいくつかある。

 脚本が巧みで、彼女との会話から男の略歴が、男の回想のような形で、伏せられていた事の真相が明示され、理解の助けになる。不気味な国スイスをうまく表現した作品である。