映画 月山 (1978)

 小説を読みながら映画をもう一度見た。なるほどこれでは小説をすぐ発表できない事情があるなとわかる。法を犯している村人を密告するわけにはいかないのである。小説でいとこ煮が出てくるが、映画では接写がなくよくわからなかった。後で調べるとどうやら小豆と餅米から作ったものらしい。何もない村だがお寺と共存することでなんとか存続していたのである。映画も色々見てきたが、この映画はこれが日本だといえる最適なサンプルだと思う。人為的なものが極めて少ないピュアなものである。

 主人公は身の危険を感じて逃げ出すということはなく、春になって悠々と寺を出て行ったのである。十王峠からすでに春になった庄内平野が望めるかと思ったら、小説にも映画にもそれは出てこなかった。