伊藤計劃 虐殺器官 (2007)

 長編なので読むのが大変だが2度目を読んでしまった。途中で挫折したものと思い込んでいたからだが、自分のブログに記事があるので読んでいることがわかったのである。

 長いのは大学の講義のような対話があるからで、プルーストの小説に似ている。さらっとこのようなことを書いている。

『(略)すべての仕事は、人間の良心を麻痺させるために存在するんだよ。資本主義を生み出したのは、仕事に打ち込み貯蓄を良しとするプロテスタンティズムだ。つまり、仕事とは宗教なのだよ。信仰の度合いにおいて、そこに明確な違いはない。(略)』

 全編で近未来の戦闘の様子が描かれているが、細を穿つ描写は若干グロテスクな感じがする。敵による殲滅作戦に遭遇した後は、同僚のウィリアムスが自分のアーカイブから映画を選んで、バドワイザーを飲みながらドミノピザにかぶりつく。アーサー王の映画である。

 ここから後の内容は今回初めて知ったので、やっぱり挫折していたのだった。最後の作戦とその後日談が記されていたが、結構壮大などんでん返しがあったので感心した。